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2022年2月12日 (土)

人生で一番合わない職場

こんなご時世、非正規とはいえ雇い先があるだけでも幸運なのかもしれない。

だけど、どうしても合わないという場合もある。

以下、新聞記事風に(ぼやかしあります)。

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医療福祉施設で介護補助のパートをしている40代のN子。7年前にADHDを主とする発達障害(神経発達症)と診断されて、投薬治療をしているが、職場には告げていない。以前より意欲的になった代わり、年々、物忘れや動作の遅れなどが進み、悩んでいる。

施設の利用者は年齢を問わず、認知症や脳卒中の後遺症、高次機能障害などを抱えた人達だ。

学生時代、知覚心理学を学んだ彼女にとっては学びと触れ合いの場。苦手だった会話や介助もだんだん楽しみになった。福祉系の民間資格も取り、この仕事をライフワークにしようかとも考えていた。

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ところが、看護師資格をもつ上司は、N子の特性を快く思わなかった。

遅刻や欠勤はないし、業務の妨げになるようなミスもしていない。それでも端々に出る発達の偏りから、上司は彼女が安全で安心なサービスを提供できないと評価したのである。

N子が清掃や補充中心の作業に回されてしばらくした頃、職員がオミクロン株に感染し始めた。

数日経って突然、彼女は部門の責任者に小さな倉庫へ連れて行かれた。今までの部署は感染のリスクがあるから、しばらくこっちでお願いしたいの、と。

十分な説明も、同意の余地もなかった。

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移った部署は二人体制。先輩は厳しいながらも親切で、気長に見守ってくれそうだ。

ところが業務内容が問題だった。決められた時間では到底終わらないような作業を、山のようにやらされるのである。

職人のような精密作業、延々と袋を閉じるだけの単純作業、軽装備での危険物処理、20キロ以上の荷物を次々持ち上げる重労働……。机も休む椅子もない。

マニュアルは在っても無いようなもので、曜日、場所によって例外が山ほどある。その例外が複雑ですぐには覚えられない。

しかも上からは、早く一人でやらせろ、残業はさせるな、などの指示が先輩に来たという。

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N子はすぐに筋肉痛、神経痛、メモリオーバーになった。

前の部署のSNSグループには残っていたが、名簿からは自分の名前だけ消されていた。元上司は久々に会っても、一べつしただけで声もかけない。

「あ、要らないんだ」とN子は直感した。

家に帰ると筋肉やら神経やらが痛み、物を拾うこともできない。夜、横になると、脳裏に幻覚や幻聴が現れたりもする。

N子は暇さえあれば自分の適性のことを考えた。

「いくら頑張ってもできないのは、私に障害や症状があるからなんだろうか。どうすれば苦手だらけの仕事についていけるんだろうか。」

他の職員が散らかした物品の後片付けをするのも彼女達の担当だ。マナーの良い職員は少ない。マニュアルが例外だらけなのも、他部署の要望に応じ続けた結果なのだろう。

先輩が一人勤務だった時は、時間に終わるはずのないノルマを、超過勤務をつけず、休み時間も惜しんで続けてきた。管理側に改善を要望しても通らなかったという。

そこまでしなければならないとは。N子は強い憤りを感じた。

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速く、正確に、大量に。世の中はその通りできる人ばかりではないのに、この職場はまるで、「劣る者は去れ、有能な者が残れば良い」と言わんばかりだ。

しかし、そのような旧態依然たるやり方が、いつまでも続くものだろうか。

N子は移った部署に腰を据えることを決め、体力や器用さを訓練で身に付けようと考えている。同時に、得意分野を活かせる資格試験の勉強を始めた。

それらは職場のためなどではなく、自分自身と、利用者のためにである。

続く

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